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かぜ

風

壺井 栄

「文芸」1954(昭和29)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,702 字 · 78 页

青空文庫

四

みんなおもしろがって、なかなか話はつきなかった。文学と青春の夢は三枚のふとんに包みきれず、いつか文学は押しだされてしまい、身うごきもろくにできないでいるとき、扶佐子は、

「このふとん、くさいわね。百万人の精液のにおいじゃない?」

みんなが笑いだした。それをきっかけに、扶佐子はだんだん露骨になり、わざとらしく甘い声でNを呼んだりした。それをくすくす笑っていた多枝たちも、やがて誘われて大っぴらになった。

「井村さん、おとなしいわね。だまってる人はすごいのよ。どうお。」

扶佐子にいわれて修造は、畳の上の茂緒を引きよせながら、

「だめなんだ。うちの奥さん、うぶでね。」

茂緒はひとりうつ伏せになり、この青春の渦巻にとけこめず、しのび泣きをしていたのだった。

四

結婚を祝って修造の兄から百円おくってきたのは、半月もたってからだった。手紙には、どうせ修造のことだから、人のいいなりにはなるまいが、それならそうといってくれたら、こちらで式ぐらいはあげられたのに、早まったことをした。茂緒の家へも申しわけないことだし、それほどわからぬ兄でもないはずだというようなことが書いてあった。