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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
「ところで、僕が兜と幌骨と云った理由を云おう。つまり、易介の体が宙に浮ぶと、具足全体の重心が、その上方へ移ってしまう。のみならず、それが一方に偏在してしまうのだ。だいたい、静止している物体が自働的に運動を起す場合というのは、質量の変化か、重点の移動以外にはない。ところが、その原因と云うのが、事実兜と幌骨にあったのだよ。それを詳しく云うと、易介の姿勢はこうなるだろう。脳天には兜の重圧が加わっていて、背の瘤起は、幌骨の半円の中にスッポリと嵌り込み、足は宙に浮いている、云うまでもなく、これは非常に苦痛な姿勢に違いないのだ。だから、意識のあるうちは、当然手足をどこかで支えて凌いでいたろうから、その間は重心が下腹部辺りにあるとみて差支えない。ところが、意識を喪失してしまうと、支える力がなくなるので、手足が宙に浮いてしまい、今度は重点が幌骨の部分に移ってしまうのだ。つまり、易介自身の力ではなくて、固有の重量と自然の法則が決定した問題なんだよ」
法水の超人的な解析力は、今に始まったことではないけれども、瞬間それだけのものを組み上げたかと思うと、馴れきった検事や熊城でさえも、脳天がジインと痲痺れゆくような感じがするのだった。