轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
その足跡は、奥の垂幕の蔭に消え、最奥の棺室に続いているのである。ところが、その折彼等が、思わず固唾を嚥んだと云うのは、垂幕の裾から床の隅々にまで、送った光の中には、わずか棺台の脚が四本現われたのみで、そこには人影がないのだった。紋章のない石――すでにレヴェズは、この室から姿を消してしまったのであろう。と、熊城が勢いよく垂幕を剥いだ時に、突然彼は、何者かに額を蹴られて床に倒れた。それと同時に、垂幕の鉄棒が軋む響が頭上に起って、検事の胸を目掛けて飛んだ固い物体があった。彼は思わずそれを握りしめた――靴。しかしその瞬間、法水の眼は頭上の一点に凍りついてしまった。見よ、そこには一本の裸足と、靴の脱げかかったもう一本――それが、鈍い大振子のように揺れているのだった。
さながら、脳漿の臭いを嗅ぐ思いのする法水の推定が、ついに覆されてしまった。レヴェズは発見されはしたものの、垂幕の鉄棒に革紐を吊って、縊死を遂げているのだった。閉幕――恐らく黒死館殺人事件は、このあっけない一幕を最後に終ったのであろう。しかし、この結論が、けっして法水を満足させるものでないにもせよ、それは不思議なくらいに、彼を狼狽させた。