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あすなろう
あすなろう
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1960(昭和33)年8月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,925 字 · 41 页
小女が大きな湯呑を持って来、岡っ引の前へ置いて去った。岡っ引は並べてある酒と肴の皿を押しやり、水を二た口、喉を鳴らして飲んだ。
「あいつは左の腕に、花札の四光の刺青をしている、それで四光の平次と云われてるが、二人も人をあやめた凶状持ちだぞ」
「二人もあやめた」
「一人は藤沢宿、もう一人は川崎、どっちも十手を預かる御用聞だ」岡っ引は片手を伸ばして政の衿を掴んだ、「――さあ吐いちまえ、てめえ平次とどんな仕事をした」
「知らねえ、あっしゃあなんにも知らねえ」
「番所へしょっぴこうか」
「おらあ、あっしは三日めえに品川の升屋で会った、ほんとです、初めて升屋で会って、向うからさそわれて飲みだしたんで、それからずっと酒のつきあいをしていただけです、嘘はつきません、本当にそれっきりのつきあいなんです」
「泊ったのはどこだ」岡っ引は掴んだ衿をねじりあげた、「野郎、ごまかすと承知しねえぞ」
「さいしょは品川の万字相模」と政は喉の詰った声で云った、「ゆんべは高輪の松葉屋という安宿です」
「今夜はどうする手筈だった」
「なんにも」と政は首を振った、「まだなんにも相談しちゃあいません、相談する