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あすなろう
あすなろう
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1960(昭和33)年8月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,925 字 · 41 页
ようだな、ええ、屋号のことは云いませんでしたよ」
「白魚河岸の長屋ってのは」
「そう云うのを聞いただけです、いまになってみると嘘かもしれませんが」
「それでみんなか」
「これで残らず申上げました」
「隠しだてをしてあとでばれるとお繩にするぞ」と岡っ引は云った、「平次は人殺し凶状、ちっとでもてめえにかかりあいがあれば、これまでの罪をきれいに背負わせてやるぜ」
「ええ、そうして下さい」政は弱よわしく答えた、「あっしにもし罪があるなら、いつでもお繩を頂戴しますよ」
岡っ引は唇をひき緊め、いまにも唾を吐きかけそうな顔で、屹と政を睨みつけたが、ようやく舌打ちをして立ちあがった。
「もう一つ云っておく」と岡っ引は歯と歯のあいだから云った、「こんど平次に会うか、いどころがわかったら知らせるんだ、いいか、きっと知らせるんだぞ」
「わかりました」と政はきまじめに答えた、「そんなことがあったらきっと知らせにあがります、きっとそうしますよ」
岡っ引は出ていった。
このあいだに三人伴れの客がはいって来、一と組が勘定をして出ていった。かれらは高ごえに話しだしたが、政のほうは見なかったし、いまの出来ごとには触れない