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あすなろう

あすなろう

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1960(昭和33)年8月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,925 字 · 41 页

青空文庫

ように、つとめて話題を避けているのが感じられた。

「いやなやつ」と小女の一人が政のほうへ来て云った、「親分づらをしていばりくさってさ、あたしあいつ大嫌いだわ、気にすることなんかないわよ政さん」

「なんでもねえさ」と政はうす笑いをもらした、「あのしょうばいは嫌われるからな、ときどきいばりたくなるんだろう、へえへえしていりゃあごきげんなんだから、あめえもんさ」

「これ飲みなさいよ」小女は岡っ引の前に置いた燗徳利を取って、政のほうへ差出した、「おかみさんにうるさいから持ってゆけって云われたのよ、いつもならあたりまえなような顔で飲むくせに、今夜は珍しく手をつけなかったわ、お酌しましょう」

「いま何刻ごろだろう」政は酌を受けながら訊いた、「五つ(午後八時)になるかな」

「いま天福寺で五つが鳴ったばかりよ」と云って小女は媚びるような眼をした、「これ、あったかいのと取替えて来ようか」

政はそっと小女の手に触った、「おめえもそういうことに気がつくようになったんだな、縹緻もぐっとあがったし、気がもめるぜ」

「うそよう」小女は政の手を叩いた、「政さんはすぐ、それだ