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あすなろう
あすなろう
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1960(昭和33)年8月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,925 字 · 41 页
文次は伏せてある小舟の端の、風呂敷包をどけて、そこへ浅く腰を掛けた。
「そいつはがらっといくぜ、あにい」
「ここんとこは大丈夫さ、そっちは脆くなってるがね、おめえも掛けねえか」
「だってあにいは」と云いながら、政は文次の脇へ跼んだ、「いまあにいは、こんなところでぐずぐずしていちゃ危ねえんじゃあねえか」
「気にするな」と文次は云った、「あんな駆けだしの岡っ引に捉まるようなどじじゃあねえや、それとも、おれがここにいちゃあまずいか」
「そんなこたあねえ、まずいなんてこたあねえが」政はちょっと口ごもった、「――じつを云うと、あの岡っ引にだめを押されたんだ」
「あいつが、戻っていったのか」
政は頷いた、「正直に云うが、あにいのことはすっかり聞いた、おっ」と政は片手をあげ、その手先を振りながらいそいで云った、「おりゃあ知らねえ、おれの知ったこっちゃあねえ、おらあただ聞いただけなんだから」
「そう慌てるなよ」と文次が遮った、「それより野郎はどうだめ押しをしたんだ」
「あにいに会うか、いどころがわかったらきっと知らせろ、さもねえときゃあかかりあいにしてひっ括るってよ」