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あすなろう
あすなろう
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1960(昭和33)年8月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,925 字 · 41 页
と文次はまたゆっくりと云った、「やることは違っても、おれたちの性分にゃあ似たところがある、たぶんそんなこったろうと思ったが、相談するだけは相談してみたかったんだ」
「ほかのことならともかく、そいつだけあ勘弁してくれ、それだけあできねえ相談だ、もうその話はやめにしてもらうぜ」
「わかったよ、そう云うものをどうしようがある」文次はふところへ手を入れながら、さりげない足どりで政のほうへと近よった、「おめえの気持がわかればいいんだ、もう話すこたあねえさ」
文次の手が颯と政の胸へはしった。
「なんだ」と政が吃驚した、「いきなり人を小突いたりして」
片手で胸を押えながら、そこまで云うと政は「う」と息を詰らせた。文次の右手がもういちど政の躯へとび、政は「うう」と呻きながら、前へよろめいた。がくんと、片方の膝が曲って地面へつき、立ち直ろうとしたが、前のめりに倒れて、両足をちぢめた。
「なんの恨みだ」と政がくいしばった歯のあいだから云った、「おれがなにをした」
「堪忍しろ、政、こうしなけりゃあならなかったんだ」
「わけを聞かしてくれ」
「生涯に一度、いいことがしたかった」