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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

そして養子夫婦に子が生れると、まもなく籍を分けて別家させてしまった。

――自分のような者を親にもっていては、ゆくさき邪魔になることもあろうから。

こう人に述懐したそうである。津田家は自分の代で絶えてもよいと思っているらしい。そんなに思いきるほどの過去があるのだろうか、それとも津田そのひとの気質で、放蕩享楽のはて厭世的になったものだろうか。玄一郎にはどちらとも判断はつかなかった。

――なにまだ油断はならない、おちつき澄ましたあの躯の中には昔の火がくすぶっている、いつ燃えだすかもしれたものではない。

そういう評をする者もある。その点も玄一郎には否とは云えなかった。人間は環境と条件によって、いつどう変るかわからないものである。棺の蓋をするまで批判はできない、玄一郎はこういうふうに見ていたのである。

藩主敦信が寺社奉行に任ぜられたという、正式の披露があったのは十月下旬で、国許でも城中で祝宴が催された。

そして月を越すとすぐ、玄一郎の身の上にとつぜん大事が起こった。或る日、役所にいると、家老職から呼ばれ、いってみると城代家老を除く全部の重臣が揃っていた。

あとでわかったのだが、その審問は初めから次席家老の采配だという、事の内容としては当然城代家老の指図をまつべきなのだが、玄一郎とは女婿という関係にあるので、和泉へ