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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

両手で持った刀を腹につけ、斬られながら突こうとするらしい、このまえと同じ手であるが、こんどはまず斬られる覚悟で、じりじりと一寸刻みに詰め寄って来る。それは凄愴そのものという感じであった。

玄一郎は左足が動かない、どのくらいの傷かわからないが、膝から下が痺れて、まだ痛みもないが知覚もなかった。

益山は六七尺まで接近した。そして、そこから躯を叩きつけるように突っ込んだ。玄一郎の躯が右足を中心にして僅かにまわり、ぎゃという悲鳴と共に益山が転倒した。刀は見えなかった。同時に右横から上原十馬が斬りつけたのであるが、刀を打落されてのめると、そのまま松林の中へとびこんでいった。

ひっ返すかと思ったが逃げたので、あとの三人もそれに続いてばらばら逃げだした。

「おうい、仲間を捨ててゆくのか」

八木隼人はこうどなりながら、刀を持ったまま近寄って来た。

「こいつはどうした、斬ったのか」

「脾腹を当てたんだが、肋骨が折れたかもしれない。――よく骨を折らせるやつだ」

こう云いながら、玄一郎もふらふらとそこへ腰をおとしてしまった。

弾丸は横から太腿を貫通して、骨には当らないが筋を切っていた。