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いなか、の、じけん
いなか、の、じけん
夢野 久作
「探偵趣味」「猟奇」1927(昭和2)年7月~1930(昭和5)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,535 字 · 78 页
だから人間は余計に服まなければ利くまいと思って、その赤玉ちうのを二つ買って来た。これを一時に服んだら大抵利くだろう。金は要らぬから、とにかく服んで見イ……と云ううちに兼は白湯を汲んで来て、薬の袋と一緒に私の枕元へ並べました。私は兼の親切に涙がこぼれました。このアンバイでは俺が兼に十円借りていたに違いないと思い思い薬の袋を破ってみますと、赤玉だというのに青い黴が一パイに生えておりまして、さし渡しが一寸近くもありましたろうか……それを一ツ宛、白湯で丸呑みにしたんですがトテも骨が折れて、息が詰まりそうで、汗をビッショリかいてしまいました」
「……フーム。それで風邪は治ったか」
「ヘエ……今朝になりますと、まだ些しフラフラしますが、熱は取れたようですから、景気づけに一パイやっておりますところへ、昨日、兼からの言伝をきいたと云って、鰻取りの医者が自転車でやって来ました。五十位の汚いオヤジでしたが、そいつを見ると私は無性に腹が立ちましたので……この泥掘り野郎……貴様みたいな藪医者に用は無い。憚りながら俺の腹の中には、赤玉が二つ納まっているんだぞ……と怒鳴りつけてやりましたら、その医者は青くなって逃げ出すかと思いの外……ジーッと私の顔を見て動こうとしません」