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いわゆる「はんせい」はわれわれをすくうか
いわゆる「反省」は我々を救うか
岸田 国士
「知識人 第二巻第一号」1949(昭和24)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,229 字 · 15 页
「お前はさつき眠つていたのか?」
「いゝえ」
「自分がはいつて行つたことは知つていたのだろう」
「知つていました」
「どうしてすぐに起きないんだ」
「生徒監殿がはいつて来られるから起きていたような風をするということは偽善的な行為だと思います。それまで寝ていたなら、やつぱり寝ていて……」
「馬鹿ツ!」と、生徒監は一喝した。
「お前は生徒監が怖くないのか!」
私は、しかし、言いたいことがもううまく言えないような気がして黙つていた。私の言いたかつたことは、実は、生徒監が来たというので慌てゝ居ずまいを正す平凡な少年の恐怖を軽蔑するつもりはなかつた。むしろ、例の反省録へ、――余は本日自習時間に居眠りをなしたり。生徒監殿の巡視によつて眼を覚したるも、抑も貴重なるこの時間を……などと、さもそのことを神妙に後悔する如く書き綴つて自ら慰める風習に、なにか反撥してみたくなつたのである。
ところで、大切なことは、この私の出方は、もうすでに、強いられた、或は、常習化した「反省」の逆な結果にすぎず、行為としても、思想としても不健全ななにものかを含み、少年の心理は既に甚しく蝕まれているということである。