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おかよ
おかよ
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1942(昭和17)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,116 字 · 19 页
その時である、先行した二隊が敵に発見されたのであろう、例の角櫓からばらばらと火がとびだして来た。それは松明であった、幾十百本となく無数の松明が、生き物のようにとびだして来て地に落ち、それが炎々と焔をあげた。今にすれば、探照燈か照明弾であろう、落ち散った松明の光は、いまや敢死隊の姿をあからさまに照しだした。
「かかれ」
という絶叫がきこえ、第二隊が隘路へとびこんだ。同時に角櫓からすさまじい一斉射撃がおこった。それは的確をきわめた狙撃だった、とびこんだ第二隊は見るまにその半数をうしない、残った者は転げるように退却した。……そこへ第三隊が追いついた。
「待て待て、これではせいてもだめだ」植村七兵衛が制して云った、「あの火があっては此方の体がまる見えだ、いくら突っこんでも狙い射ちにされてしまう、まずあの火を消すか、燃えつきるのを待つよりほかはない」
「だが待っているうちに夜が明けるぞ」
「消すとしても、しかしあの数では……」
云い合っているとき、第三隊の中から一人ぱっととびだした者がある、印東弥次郎であった。彼は槍を伏せ、身をかがめて、飛礫のように隘路へ突進して行った。