轻松读懂日语经典作品
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おみつかんざし
お美津簪
山本 周五郎
「キング増刊号」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,158 字 · 26 页
「可哀相に、綺麗な簪が泥だぜ、――親方」
静かに云って、銀のびろびろの震えている簪を、珍しい物でも見るように、くるくる廻しながら戻って来た。
「ふん。ひと晩に簪の二つや三つ、泥まみれになるのは江戸じゃあ珍しかあねえ」
「全くよ、珍しかあねえ」
「だから見ねえつもりでいな、若いの」
と亭主が圧えつけるように云う、刹那、正吉の足がたっと亭主の股間を蹴上げた。
「うっ! や、野郎ッ」
呻きながら跼む奴の、手から、刺身庖丁を奪い取った正吉、ばっと上へ跳上がると、ひらき戸を蹴放して奥へ踏み込んだ。とっつきの部屋の中から物音を聞いて、
「誰だ、権兄哥か」
と障子を明けて覗く、その喉元へ、正吉はいきなり刺身庖丁を突っ込んだ、
「ぎゃッ」
悲鳴と共にのめる奴を、突放してとび込むと、部屋の中に娘を挾んでいた二人が、あっと云って立上る、のっけへ、庖丁を構えたまま、正吉が体ごと叩きつけるように突っかけた。
捨身の庖丁に強か胸を刺されて、一人がだあっと襖もろ共倒れる。その脇から、残った一人が短刀を抜きざま正吉の脾腹へひと突き、
「――野郎!」
「あッ」
と正吉、振返りざま其奴の脇下へ、骨も徹れと庖丁を突っ込んだ。