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おみつかんざし

お美津簪

山本 周五郎

「キング増刊号」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,158 字 · 26 页

青空文庫

六

叫びながら顛倒した、直ちにはね起きようとする、隙も与えず、背中からがっしと馬乗りに押えつけられて了った。

――もう駄目だ!

と直感した時、猛烈な咳が襲って来て、捻伏せられたまま体に波を打たせて咳き入った。

「誰か燈を持って来い、泥棒だ」

馬乗りになった男が叫んだ。

二度三度叫ぶのを聞きつけて若い婢が二人、手燭を持って駈けつけて来た。主人と見える男は正吉の手から短刀をもぎ取ると、――ひどく咳き入っていて逃げる様子もないと見たか、正吉の上から体を退けて、

「燈をこっちへ見せてくれ」

と、慄えている婢に云った。

六

「あっ、おまえは……」

手燭の光に、俯伏せになった正吉の顔を見るなり、主人はさっと色を変えた。――そして振返ると、恐ろしそうに慄えている婢たちに、

「もう宜い、少し私に考えがあるから、おまえたちは向うへ行っておいで」

「あ、あの――自身番へお届けを」

「届ける時には私がそう云う、黙って向うへ行っているんだ」

婢たちは足も地につかぬ様子で、そそくさと廊下を去って行った。――主人はその足音を聞きすましてから、暫くのあいだ正吉の姿をみまもっていたが、やがて底力のある声で、