轻松读懂日语经典作品
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おみつかんざし
お美津簪
山本 周五郎
「キング増刊号」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,158 字 · 26 页
「あたしもう死ぬ覚悟でいたわ」
「ここまで来ればもう大丈夫です」
正吉は暗い街辻で喘ぎながら足を停めた、脾腹の傷を覚られまいとする苦しさ、着物の下を伝わって血は流れ続けている。
「ここからは寮も近い、お美津さま、早く貴女は帰って下さい」
「あたしが独りで帰ると思って?」
お美津はすり寄って、
「あたしは厭、おまえと一緒でなければお美津は生きる甲斐もないのよ。正さん、――あたしがどんなに待っていたか、おまえは知らないでしょう」
「…………」
「ひどい、ひどい、正さん」
脾腹の傷より、もっと烈しい痛みが、きりきりと正吉の胸を抉るのだった。――いけない、正吉は強く頭を振った、「お美津にだけはそんな姿を見せたくない」そう云った茂兵衛の言葉が、鋭く鋭く思い出された。
耐え難そうに咽びあげるお美津から、正吉は静かに身を離しながら云った。
「お帰り下さい、お美津さま」
「――――」
「正吉も長崎へ帰ります、そして――真人間に、昔の正吉に生れ変って来ます。私は、悪い夢を見ました」
「正さん!」
「此の世にあるとも思えない、悪い夢でした。けれどその夢も醒めました、故郷へ帰って、この汚れた体を浄めて来ます。