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かやのおいたち
かやの生立
岡本 かの子
「解放」1919(大正8)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,632 字 · 25 页
「おかやちゃん、あんた、恥かしかったんですか、え? ほんとうに、え?」
とあきれた様に念を押した婆やは、やがて、
「早熟いなあ、あんたは、ほんとうに早熟い」
と、沁み沁みした様に、独語した。
気立ての優しい年若な甚三の嫁が、姑の苛責のために、身も細るばかり、思い煩うのを見兼ねて、ひそかに連れて、甚三が夜のうちに逐電したと云う噂さが聞え出して笛の音は一時、ばったりと絶えた。その頃のかやの稚い胸には得態の知れぬ憂鬱がひそかに忍び入ることもしばしばあった。が、間もなくその弱々しい嫁に、遠い旅先で病死されてから、甚三は再び戻って、元の勤勉な息子として酷しい母親の許に淋しく暮らす様になったとのことであった。
甚三の哀調を帯びた横笛の音は、毎夜また、南の村落から聞えて来る様になった。
今夜もまた。