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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
「日本中で実力競争の最も赤裸々に行われているところは恐らく名古屋だろうと僕は思っている。万事実力即ち金力で情実が些っともない。看板よりも内容だ。それだから旧藩公だとか御家老だとかいう連中が案外無勢力で、充分活動の資力を持って入ってくる他所のものが却って幅を利かす。実に痛快なところだよ」
「物価の廉いのも此処の一特徴だと昨夜御賢兄が言っていたね」
とお父さんが言った。
「それも実力競争の賜さ。女の子が生れると赤飯を炊いて祝うというくらい勘定高い連中だから、高いと思えば一切買わない。自然物価が廉くならざるを得ないじゃないか? 東京みたいに高い/\と言いながら買っているのとは違うのさ」
「女の子が生れると赤飯を炊くのは何ういう次第だね?」
と三輪さんが訊いた。
「芸者に売れるからさ。此処は芸者の産地としては日本一だぜ。おきゃあせ種は名古屋コーチンと共にその名天下に鳴ると日本地理の教科書に載せても宜いくらいのもんさ」
「おきゃあせとは何ういう意味だい?」
と三輪さんは一々訊く。
「置きなさいさ。お止しなさいさ。略して『おきゃあ!』ともいう。先刻電車の中で女学生が連発していたじゃないか」