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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
村岡君がイヨ/\発心したよ。ピックウィック・ペーパーズを書くそうだ」
と三輪さんは直ぐ吹聴した。
「ピックウィック・ペーパーズ? 何だい。ピックウィックてのは?」
と団さんは文学者でなくて建築の技師だ。
「君はヂッケンズを知らないのかい?」
と英文学専門の三輪さんは呆れたように言った。
「ヂッケンズ? 知らないね。そんな建築学者は少くとも英米にはないよ」
と団さんは眼中に小説家がない。
「然う/\、アイ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ンホーを自転車の積りでいたのは団君だったね」
と三輪さんはヂッケンズは沙汰止みにして、お父さんの旅行の趣意を平明な言葉で説明した。しかし工学士は、
「それなら要するに遊覧旅行じゃないか? ピックウィックでもヂッケンズでもない。何うも君達は言うことが大袈裟でいけないよ」
と貶しつけたばかりで、一向驚かない。
「相変らず愛嬌がないね」
とお父さんが笑った。
「野郎共を相手に愛嬌を振り蒔いても始まらないさ。しかし君は真正に旅行に出掛けるのかい?」
と団さんが訊いた。
「真正さ。三輪君も行くから君も来ないか?」
「まあ、御免蒙ろうよ」
「何故? 忙しいのかい?」