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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

といって豆腐殻だの菜葉の切れ端だの餡粕だのを喰べさせます」

と説明を始めた。

「毎年十月半ばの土曜から日曜へかけて鹿の角きり祭りがございます。これが又珍らしい見物で、大変な人出が致します。切りました角は一週間の角祭りを済ました後春日様の出入商人へ払い下げられ、お土産の角細工になって皆様の御調法を致します。御承知でもございましょうが、鹿は至ってお産の軽いものでありまして、産気がつきますとこの辺の路傍に寝転んで生み落します。そうして物の一時間と経たない中にもう親も子もノコ/\歩いて行ってしまいます。産婆も何も要ったものでございません。なお人間と一つも変らず母の胎内に十月居りますところから鹿の角は安産のお守りとして珍重されます。それでこの地方では女の子にお鹿という名をよくつけますし、又臨月になりますと髪飾りを悉皆鹿の角細工のものに更える習慣がございます」

車屋さんの安産論が身に沁みたのか、春日様の境内にあった寄り木神社というのが特に僕の注目を惹いた。柞、藤、椿、南天、陸英、桜、楓の七種が一本になって覚束なく生えている。石婦石郎もこの木の枝に紙撚を結びつけて祈願すれば子宝を授かるとある。