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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

「何なら一つモーセの話でもしてやって呉れ給え」

「イヨ/\晴れる見込がないから予定を変えて芝居へでも行こうじゃないか? 星野君、牧師だって芝居ぐらいは差支ないだろう?」

と三輪さんが言った。

「僕は芝居へでも活動へでも行く。職業柄却って世俗に遠ざからないように努めている。南座には今鴈治郎が来ているよ」

とこの牧師さんは案外話せる。

「芝居は感服しないね。やることが悉皆八百長だから退屈してしまう」

と団さんは早速故障を唱えた。

「団君は芝居は駄目だよ。一度引っ張って行ったことがあるが、あれじゃ実際退屈するだろうと思う。相撲を見る気でいるから皆目分らないんだね。そうして大道具の立付を始終気にしている。但し、『先代萩』の御殿か何かには大いに感服したぜ。『あの大勢並んでいる若い女は無論男だろうが、一体何ものだい?』と訊くから、『御殿女中さ』と答えると、『ふうむ、皆女中か? 流石に封建時代は女中払底じゃなかったんだね。感心した』と固唾を呑んでいた。何うも力瘤の入れどころが違う。余程感激したと見えて幕になって弁当を食べ始めても矢張り御殿女中のことばかり言っている。僕は外聞が悪くなって、もうこの男と一緒に芝居へ来るもんじゃないとツク/″\思ったよ」