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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
家も生薬屋ですけれど、向う三軒両隣り皆生薬屋よ。神田の古本屋よりも激しいわ。全く軒並みよ。道修町って妙なところでしょう?」
「頭痛がしても家が生薬屋なら安心ね」
「ところが然うでないのよ。お父さんが言っていましたわ――此処の家のは飲む薬でなくて売る薬だよ。何処か悪いようなら医者に見てお貰いってね。私、初めて売薬という意味が分ったの」
というような問答があった。
二階へ戻って見ると、お父さんは小川さんを相手に頻りに不器用な社交振りを発揮していた。
「然うかね。日曜以外絶対に休日なしと来ちゃ勤まらない。ナカ/\慾が深いね。そんなに働いて面白いかい?」
「面白くもないが、仕方がないさ。商売だもの」
「住友さんだの鴻池さんだのと金持を様づけにして然う有難そうに言うところを見ると、最早大分出来ているね?」
「否、一寸出来かけて又新規蒔直しというところさ」
「この頃は儲からないかい?」
「儲かる口もあるが、儲からない口もある。再び渾沌時代さ」
「戦争では儲けたろうね?」
「その話さ。儲かったが、丁度それぐらい又吐き出してしまったから旧の木阿弥さ」
「昨今は実際不景気だろうね?」
と宛然訊問の形だ。