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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
「然うですよ。鯛の釣れない郷里で百姓をしていれば、間違はないのですが、困ったものです。始終夫婦仲が悪くて、今度は何うやら別れ話になったようです」
と小林さんは冗談を言いながらも下僚の身の上を案じていた。
山を下りると直ぐに浄光明寺へ駈けつけた。西郷、桐野、篠原、村田と悲劇の主人公の墓が高台から例の桜島を見晴らしている。上野公園で馴染みの銅像と寸分違わない木像がこれも桜島の方を向いて立っている。矢っ張り小林さんの説の通り桜島を除去した鹿児島は此処の人には有り得ない。墓にも像にも桜島山を眺めさせようという努力が明瞭に現れていた。
「大西郷が生きていて露西亜から帰って来るという評判が僕の小学校時代にあったが、鹿児島へ来て見ると実際生きている以上の感化だね」
とお父さんが感心した。
「西郷丈けは真正に豪かったようだね。第一太っている。痩っこけた奴は何処にか不足があるもんだから策を弄して仕様がない。或程度から上の人物は貫目で量ると大した間違はないよ」
と団さんの英雄の定義は頗る簡単のようだ。
「一理あるね。カーライルも丁度そんなことを言っている」
と三輪さんも西郷の為めには痩せた人の主張をしなかった。