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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
「此処が箱根よ」
と田鶴子さんがハンカチを鼻へ当てたまゝ教えてくれた。大人連中の方に屈託していて田鶴子さんのことは余り書かなかったが、僕達はもうこの時には大分打ち解けて来た。
「然う? 八里の山道だからこんなにトンネルがあるの?」
と僕は他所ゆきの言葉は疾うに捨てゝしまった。
「あの箱根は元箱根で蘆ノ湖のある方よ。真正に八里の山道で迚も汽車なんか通れないわ」
「あなたお出になったことがあるの?」
「えゝ。去年学校の修学旅行で」
「随分遠くまで来るんですね。女学校でも」
「女学校でもなんて酷いわね。けれども箱根から彼方は知らないんですから楽みですわ。早く沼津に着きたいものね」
「真正に待ち遠しいなあ。僕は初めて宿屋に泊るのだから嬉しくって仕様がないんです」
その待ち構えていた沼津に着いたのは田鶴子さんが御殿場で凸凹した富士山を写真機に収めてから少時後だった。お父さんのお友達の仙夢さんがプラットフォームに出迎えていてくれた。簡単に紹介があってから、僕達はすぐに用意の自動車に乗り込んで、韋駄天走りに町を通り抜けたと思うと、もう海岸に着いて仙松閣ホテルで休憩していた。