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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

「好い景色だなあ!」

と僕達が見惚れていると、

「此処だけは自慢です」

と仙夢さんも満足らしかった。そうして僕達を噴水のあるところへ引っ張って行った。

「何だな! 時は春、瓢まくらに鼾かな。成程、竹冷だね」

と三輪さんが枝折形の大きな句碑を読んだ。

「角田さんは此処の人だったか知ら?」

とお父さんが疑問を起すと、仙夢さんは、

「さあ、兎に角此処で育って此処で弁護士をしていたという話ですよ。それは然うともうソロ/\出掛けますかな」

と又催促した。

そこで僕達は再び自動車に鮨詰になって三島へ向った。相変らず目の廻るような速力だ。

「君、自動車は儲かるかい?」

とお父さんが訊いた。

「毎期欠損さ。しかし社会の為めだと思ってやっている」

と仙夢さんが答えた。

「大きなことをいうぜ。君が社長かい?」

「僕は専務だ」

「然う/\。専務だから仙夢と号したという手紙だったね。句はやっているかい?」

「社務多端、迚も駄目さ」

「人を轢いて三十円ぐらいで誤魔化そうとすると自然忙しいね」

「外聞の悪いことを言ってくれるなよ。僕のところは事故は極く少い」

「田舎は人通りが少いから運転手が楽でしょうね? しかしそれにしても、これは規定以上の速力じゃありませんか?」