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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
「恐れ入りますな。道理で落ちついていると思いましたよ」
と団さんが言った時、汽車が動き出した。
「まあ、綺麗だこと!」
と間もなく田鶴子さんが感歎の声を洩らした。成程、桃の花が咲いている。それも十本二十本ではない。見渡す限り桃畑だ。
「惜しいなあ! こんなところでもドン/\行ってしまうんだもの」
と僕が言った。しかし目の覚めるような紅の霞は、千本松原を背景に可なり長い間、棚引き続けた。
「元来静岡県は人材物資二つながら貧弱で有名なところですが、この頃は発憤して種々と画策しています。この桃畑もその一例で、近頃の努力です。しかし人材に至っては如何とも仕方ありませんな。小成に安んじるのがお国風ですから、金持にしても百万以上のは片手の指を折るほどしかありません。殊に伊豆からこの辺へかけて薄志弱行の本場です。早い話が東京へ修業に出掛けても物になって帰るのは極く少数です。僕も到頭卒業しないでしまったが、これが静岡県人としては代表的資格で、将来代議士になる時の足しになるだろうと思っているくらいですよ」
と仙夢さんは桃畑から静岡県人の性格に説き及び、
「名所にしても人物払底の跡が歴然として現われていますな。