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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
「山葵はこんなところで出来るもんかね?」
と団さんが言うと、
「水の綺麗な沢で出来ます。静岡は滅法界もなく水の好いところで、大東館のあの水も掘抜であります。水に不自由がありませんから、人口七万、県下一番の大都会ですが、水道の必要がありません」
「やはり富士の白雪かな」
「然ようであります。能く御存知でありますな」
とこの車屋は何うも兵隊上りらしかった。そうして、
「これから通ります西草深町は役人町でありまして、静岡の高位高官の方々が住まっておられます」
と言って轅棒を上げた。
浅間神社は後廻しにして僕達は町外れの大岩の臨済寺というのへ行った。苟くも由来のある神社仏閣といえば必ず宝物と銘を打って古道具を沢山陳列して置く。元来宝物の古道具だから見に来る人が多いのだか、見に来る人が多いから古道具が宝物になったのだか、その辺は一寸判定に苦しむ。鶏が玉子を生むとも言えるし玉子が鶏を生むとも言えないことはない。兎に角今日も宝物を拝観した。今川義元の菩提所に家康が幼時人質に来ていたという因縁が絡んでいる丈けに道具の品目が夥しい。義元公自画自讃という掛物があった。蝉丸の法師姿を描いて、上に「これやこの行くも帰るも分れては……」