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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
ふうむ、大きいなあ、ぼくの頭と比べてみるかな。……おや、これは驚いた。ぼくの頭と同じだなあ! アハハハハハ」
田川君は大きな声を出して笑った。しかし、その目にきらりと光るものを私は見逃さなかった。
――田川君の長男の伸治君は誠一と同い年であった。家も隣だったので、長男の生まれたころ、二人の若い父親は、若い妻が夕飯の支度をする間、おぼつかない手に、前途洋々たる第二世を抱いて門に立ち出で、胸ふくらまして輝かしい未来を語り合ったものだった。二人の長男は同じ時にはしかにかかり、同じころに腹をこわし、いっしょにかぜを引いて、こんこん咳をし、同じように青ばなを垂れて大きくなった。ミサ拝みもいっしょに行った。クリスマスには二人の父はお互いにサンタクロースになった。学校へも毎日手をつないで行った。二人の父はそれぞれ長男に大きな期待をかけていた。
原子爆弾は田川君の妻と三人の子を一瞬に奪った。田川君が郊外の勤務先からここにたどりついたとき、小学校の防空壕に、きょとんと座っている伸治君と三男の尚士君とを見いだした。二人の子を連れて田川君は私の救護所に来た。三男のほうは頭に傷を受けていたのでその手当てをしたが、伸治君のほうは無傷で元気だったから、安心して、お互いにまあ長男だけは生き残ってくれてありがたいと手をとって語り合った