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このこをのこして

この子を残して

永井 隆

「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页

青空文庫

日本人は戦争はきらいなんだ。けれども開国以来、戦争せずにはおられない国の事情だったので、絶えず戦争をしていて、ついに戦争が好きだ、という印象を外国人に与えたものだ。戦争せずにはおられない事情というのは、海の中に頭を出した火山の上に住んでいるため、人口を充分養うだけの物資がなかったことだ。日本の歴史は戦争の歴史だ。神武天皇から原子爆弾まで、腕っ節の強い者が偉いとされてきた。その考えで育てられてきた日本民族のとどのつまりはどうかね? ――このとおりだ。まったくイエズスのことば、『なんじの剣をさやに収めよ、すべて剣をとる者は剣にて滅ぶべければなり』のとおりになった。――さて、二千年の歴史をかえりみて、日本人が気がつかずに犯していた過ちを見いだすのだが、それはなんだろう?」

「さあ? ――」

「文化の力によって新しい資源を探し出し、作り出すことをしなかった。ただ天然にある乏しい資源を、武力によって手に入れようと努めた。――これなんだ。よく考えながら歴史をもう一度ふりかえってごらん」

「…………」

「創意工夫をこらして生活を豊かにする、という平和的な生産的な方法をとらないで、ひとが開発した資源を盗んで楽な生活をしようとしたのだ。