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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
神は常に私を愛し、絶えず私の幸福を願っておられる。与えたものが愛の思し召しによるものであると同じく、取りたもうのも愛の思し召しによる。私の身のまわりに起こるすべては、神の愛の摂理のあらわれである。それゆえ私はいかなる目にあおうとも、神の御名を賛美せずにはおられない。
原子爆弾がはじけたとき、この浦上のカトリック信者一万のうち八千人が死んだ。ここには純心と常清の二つの女学校があった。いずれも女子修道会の経営するところで、校長以下教員は修道女がほとんどすべてであった。純心の生徒たちは、工場に動員されていたが、燃ゆる火の中で賛美歌をうたいつつ、次々と息絶え、灰になっていった。それはまったく古の神の祭壇にけがれなき小羊をささげ燃やして神の御意を安らげた燔祭さながらであった。ああ、第二次世界大戦の最後の日、長崎浦上の聖地に燃やされた大いなる燔祭よ!
燔祭の炎のなかにうたいつつ
白百合少女燃えにけるかも
常清女学校のほうも同じ最期だった。ここでは二十七人の修道女教員が天に召された。その夜私は教室の小笹君たちを患者の手当てに出したが、その話によると、女学校から東のほう二百メートルの川端に真夜中幾人かの合唱するラテン語の賛美歌が続いたり絶えたり聞こえていたそうである。