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ちいさこべ

ちいさこべ

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页

青空文庫

おりつも酒や肴をはこんだりさげたりするだけで、少しも席におちついていず、しぜん話をする機会もなかった。そのため子供たちのことはすっかり忘れていたのであるが、その騒ぎで眼をさますと、いきなりはね起き、障子をあけて「うるせえ」とどなった。

そこは板敷で、うすべりを敷いた上に、夜具を並べて寝るようになっている。切り窓の障子が明るんでいて、隅のほうにくろが一人、掛け蒲団を頭までかぶって寝ており、まん中の広いところでは、十幾人かの子供たちが、もちゃくちゃにした夜具の上で暴れていた。

高いどなり声と、茂次の姿を見て、子供たちは組打ちをやめ、ぴたっと沈黙した。

「原っぱじゃあねえ、静かにしろ」と茂次はまたどなった。

そこへ、向うの障子をあけて、前掛で手を拭きながら、おりつが出て来た。頭に手拭をかぶり、襷を掛けていて、茂次に目礼しながら、子供たちを叱った。茂次は子供たちを見た。十三歳くらいになるのが一人、小さいほうは五つくらいだろう、数えてみると十二人いた。

「話があるから来てくれ」と茂次がおりつに云い、そしてくろに向ってどなった、「いつまで寝ているんだくろ、起きろ」