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ちいさこべ
ちいさこべ
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页
しぜんとそうなってしまう、みだらだと思うのはおとなのほうだ、自分にみだらな気持があるから、子供の眼がみだらなように見えるんだ」
「あたしのほうがみだらですって」おりつの眼が屹となった。
「おれは子供のことを話してるって云ったろう」と茂次は乱暴に遮った、「おめえがどうのこうのと云うんじゃあねえ、子供にはそういう年ごろがあり、それがむずかしいときなんだから、こっちで気をつけなくっちゃいけねえと云ってるんだ、わからねえのか」おりつはひょいと身をそらした。わからねえのかとどなった声と、茂次の赤くなった顔つきで、ぶたれでもするように感じたらしい。茂次もおりつの身振を見て、逆にどきっとし、「もういい」と顔をそむけた。
「ああおどろいた」とおりつが云った、「こわい声だこと、ぶたれるかと思っちゃったわ」
「つまらねえことを」
「小さいときぶたれたことがあるんですもの」
「つまらねえことを云うな、おれはくさったって女の子なんかぶちゃあしねえ」
「あたしはぶたれたのよ、七つの年だったわ、いまでもちゃんと覚えてるわ」とおりつはからかうように云った、「横町の豆腐屋の前のところよ、いきなりぴしゃって、頬ぺたをぶったじゃないの」