轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちくしょうだに

ちくしょう谷

山本 周五郎

「別冊文藝春秋」1959(昭和34)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,788 字 · 138 页

青空文庫

と隼人が云った、「――人間である限り学問や教養がなくとも、自分をよくしようという本能や、不倫な行為に対する自責、羞恥心ぐらいある筈ではないか」

「貴方は忘れていらっしゃる」老人はまた太息をつき、ゆっくりと首を左右に振った、「ここは流人村です、百五十年ちかいあいだ、世間からまったく隔てられ、罪人であり罪人の血筋だという刻印を捺されて、なんの希望もなく生きて来た者たちです、かれらの心に刻まれた刻印がいかに根深いか、そのためにしみついた絶望感がどんなに抜きがたいものか、おそらく、貴方には御想像もつくまいと思います」

隼人は黙って、炉から立ち昇る青白い煙を見まもっていた。

「私は、――」とやがて隼人が眼をあげた、「正内どのを頼みにして来たのだが」

「できる限りのお手助けは致します、それはこのまえにも申しました」と老人が云った、「しかし私はここを知りすぎていますし、自分で失敗した経験もあるので、非常に困難であるということを、よく承知しておいて頂きたいのです」

「失敗した経験というのは、どういうことだ」

「私はこの村の人間ではございません」

隼人は黙っていた。住民の人別に名がのっていなかった、ということを云おうとしたが、その必要はないと思ったのである。