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ちゃん

ちゃん

山本 周五郎

「週刊朝日別冊陽春特別読物号」朝日新聞社、1958(昭和33)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,377 字 · 45 页

青空文庫

からひまをとり、片方は京橋の金六町、片方は檜物町に、自分たちの店を持った。

二人は五桐火鉢にみきりをつけたのだ。先代までは珍重されたが、時勢が変るにつれて評判も落ち、注文がぐんぐん減りだした。五桐の品を模した安物がふえたし、世間の好みも違ってきたのであろう。手間賃を割って値をおとしても、売れる数は少なくなるばかりであった。――

これでは店がもちきれないので、五桐でもやむなく新しい火鉢に切替えたが、名目だけは残したいので、重吉が一人だけ、元どおりの火鉢を作っていた。新助はそのことを云いだしたのだ。もう三十五にもなり、子供が四人もあり、職人として誰にも負けない腕をもっているのに、長屋住いで、僅かな手間賃を稼ぎにかよっている。もうそろそろ自分の身のことを考えてもいいころではないか、と新助は云った。

重吉は飲みながら聞いていた。なにも云わないが、飲みかたが少しずつ早くなり、お蝶か新助が酌をしないと、手酌で飲んだ。

「心配してくれるのはありがてえが」と重吉はやがて云った、「おれにはいまの仕事のほかに、これといってできることはなさそうだ」

「それで檜物町と相談したんだ」