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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

代表的な観光道路で、白地に黒線のマークを入れた道路標識が、スマートな姿体で夜目にも鮮かに車窓を掠め去る。

やがて自動車は、ひときわ鋭いヘヤーピンのような山鼻のカーブに差しかかった。運転手は体を乗り出すようにして、急激にハンドルを右へ右へと廻し続ける。――ググググッと、いままで空間を空撫でしていたヘッド・ライトの光芒が、谷間の闇を越して向うの山の襞へぼやけたスポット・ライトを二つダブらせながらサッと当って、土台の悪い幻燈みたいにグラグラと揺れながら目まぐるしく流れる。と、その襞の中腹にこの道路の延長があるのか、一台の華奢なクリーム色の二人乗自動車が、一足先を矢のようにつッ走って、見る見る急角度に暗の中へ折曲ってしまった。

「チェッ!」運転手が舌打ちした。

退屈が自動車の中から飛び去った。速度計は最高の数字を表わし、放熱器からは、小さな雲のような湯気がスッスッと洩れては千切れ飛んだ。車全体がブーンと張り切った激しい震動の中で、客席の紳士が眼を醒した。

「有料道路はまだかね?」

「もう直です」

運転手は振向きもしないで答えた。とその瞬間、またしても向うの山の襞へ、疾走するクーペの姿がチラッと写った。