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ひとでなし
ひとでなし
山本 周五郎
「講談倶楽部」1958(昭和33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,484 字 · 38 页
んですよ」
「そうだとしてもさ」
「おっ母さんでも生きていたら、また違った意見が出たかもしれませんけれど」とおようは酌をしながら云った、「それにあの人があんなになったのは、お父っさんが死んだあとのことで、それまではごくまじめに稼いでいたんですから」
「僅か二年そこそこだろう」と彼は乱暴に云い返した、「まじめに稼いだと云ったって、僅か二年そこそこだ、おやじさんが亡くなるとすぐに正体をあらわした、亡くなるとすぐだ、それこそ百カ日も待たずにだ、そして、一周忌のときにはもう店をたたんで、裏店へひっこんでいたじゃないか」
「私はみんな知ってるよ」と彼は続けた、「女房をもらってからも、おまえのことが頭からはなれなかった、いまだから云うが、噂を聞くたびに私は、はらわたが煮えるような思いをしたものだ、あいつは、――あの男は悪党だ、骨の髄からの悪党だ」
おようは盃を取って飲んだ。康二郎は酌をしてやり、おようはそれも飲んだ。
「そうよ、仰しゃるとおりよ」
おようはそう云って立ってゆき、燗徳利を二本持って戻った。それから、静かに康二郎に酌をし、自分も手酌で飲んだ。