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へちまのき
へちまの木
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1966(昭和41)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,120 字 · 58 页
五
房二郎は膳の上から盃を取り、眉をしかめながら呷った、「へえー、そういうことかい、へえー、そいつはとびきりへちまの木だ」
「おめえときどきそれを云うが、へちまは木にゃあならねえぜ」
「どうして」と房二郎が反問した、「だって茄子の木ってことはみんな云うじゃねえか」
「どっちでもいいが、茄子は一本立ちだから木と云ってもいいだろう、しかしへちまは竹とか木なんぞに絡みつく蔓草だからな、どうこじつけても木たあ云えねえんだ」
五
房二郎は夢の中で、やわらかく、吸いつくような、熱い女の躯の重みを感じた。いつかの女だな、と彼はおぼろげに思った。女の躯は彼を上から蔽い、押しつけたり、緊めつけたりした。けんめいに苦痛を耐えているような女の声を聞きながら、また酔いすぎたんだな、と彼は思った。躯の一部に異様な感覚がおこり、その感覚が急に頂点に達したとき、彼は女のかすかな、わけのわからない叫び声を聞き、自分の全筋肉がばらばらにほぐされるのを感じた。
「池さん、もう起きないとおくれるわよ」とおるいが云った、「もし文華堂へいらっしゃるんならだけれど」
「いきますよ」うとうとしながらそう云ってから、房二郎は眼をさまして、枕許にいるおるいを見た、「ああ、あんたか」