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へちまのき

へちまの木

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1966(昭和41)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,120 字 · 58 页

青空文庫

七

「危ねえもんだ」と木内が云った、「よしたほうがいいんじゃねえかな」

そこへ文華がはいって来た。

「いま桜所はんから聞いたんやけど」とちょび髭を撫でながら、文華は房二郎に云った、「あんたの写したのんは売り物にならんそうやな、どうでっか」

「そんなことはありませんよ」と木内が云った、「桜所さんには桜所さんの意見があるでしょう、けれども池さんの雅文調の写しも、売り出してみれば長続きがするんじゃないんですか」

「記事屋はんの勘では、売れるか売れないかの判断はむりでっしゃろ」鼻で笑うような口ぶりで文華は云い、房二郎の机の上から写した物を取りあげた、「――これ、ちょっと読ましてもらいまっせ」

七

「えっ」と房二郎は顔をあげた。

「鶉の叩きよ」とおるいが云った、「なにをそんなに驚くの」

「ああそうか」と云って彼は頭を振った、「いや、なんでもない、このあいだどこかで、鶉の串焼きが出来る、って聞いたばかりなんでね」

「小網町の沢茂っていうお店でしょ、その話はうかがったわ」

「ひでえもんだな、そんなことまで饒舌ったのか」

「だからあんまり酔っちゃあだめだって云ってるでしょ、飲みたかったらここへ帰ってからあがればいいのに、それなら酔い潰れたって間違いはないじゃありませんか」