轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

へちまのき

へちまの木

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1966(昭和41)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,120 字 · 58 页

青空文庫

彼は木内を抱えるようにしてあるき、その長屋の木戸口までいった。金棒を突きながら夜廻りが通り、どこかでけたたましく犬が咆えていた。――木戸はあいていて、長屋の両側がぼんやりと見えた。どの家も灯を消して暗いのに、一軒だけ障子に、ひっそりと灯をうつしているのが見えた。いちど泊っただけであるが、それは木内桜谷の住居に相違なかった。房二郎にはその行燈の脇に、小さな風呂敷包みを置いて、しょんぼり坐っている女の姿が見えるように思い、ぞっとして、桜谷を木戸口に倚りかからせると、また会おうと云い残して、そこから逃げだした。

「あれも人間の生活なんだな」うしろから呼びかける木内の声をうち消すように、彼はあるきながら声に出して呟いた、「――へちまは木にはならねえ、か、僻んで考えると、おれのことを云われたみたようだな」

彼は風の寒さに身ぶるいをした。文華堂の夫婦、吃りの女中、小舟町のおるい、刷り部屋の三人、その他もろもろの人間や景物が、いまはふしぎなほど自分から遠くなり、べつの世界のように感じられるのであった。

「友達の中には、気軽に町人ぐらしに慣れてゆく者もあった」と房二郎は呟いた、「しかしおれはだめらしい、おれはそういう性質には生れついてこなかったらしい、しょうがない、本所の叔父のところへゆこう」