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みごとなおんな
みごとな女
森本 薫
「劇作」1934(昭和9)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,668 字 · 34 页
そうだったかしらもないわ。
あさ子 でも、古い話だから憶えてやしない、あたしは。
真紀 させられた方で忘れないからいい。
あさ子 母さんは物憶えのいい方よ、どっちかって言うと。
真紀 あなたにはかなわない。
あさ子 どうして?
真紀 どうしてでも。(笑う)
あさ子 (わけわからずに笑う)
間。
真紀 もう出来るの? それ。(あさ子の持っている人形を頤で示す)
あさ子 も少し。
真紀 今、何処をやってるの?
あさ子 裾廻しんところ。
真紀 此の間中のと、また違ってるの?
あさ子 ――。
真紀 ねえ。
あさ子 え?
真紀 また違うのをやってるのかい?
あさ子 そら、とうとう間違えちゃった。母さん、いろんなこと言うから、ほら(示して)こんな。
真紀 だってあなた、さんざんひとに喋らせといてちっとも聴いてやしないじゃないの。
あさ子 だから、何よ。なに言ってたの、今。
真紀 つまり、ね、あら厭だ、つまりなんて話じゃなかったのよ。少しは真面目に他人の話を聴くものよ。
あさ子 真面目に聴いてるわ、あたし。でも、何の事だか、訳が分らないんだもの、これ以上真面目になんてなれやしないでしょう。
真紀 だからさ、一体どうする考え? そんなに次から次へお人形の着物ばかり慥えて、お人形屋でも出すつもり?