轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

めおとちょう

めおと蝶

山本 周五郎

「講談倶楽部 春の臨時増刊号」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,977 字 · 47 页

青空文庫

なんでもないようだが、人の出入りの隙をみてするので、絶えず緊張しているうえに「みつかったら――」と思う恐怖がつきまとい、熟睡することもできない日夜が続いて、信乃は身も心も疲れはてていった。

或る夜半、気温が高く雨の降る一時ごろであったが、そっと寝所をぬけだし、知也のおかわをきれいにして、納戸の前まで戻って来ると、寝衣のままで良人が居間へはいって来た。足音も聞かせず、とつぜんぬっと、良人がそこへ現われたとき、信乃はあっと叫び声をあげ、紙で包んだおかわを持ったなりそこへ立竦んだ。

「――なにをしている」

良平はぎらぎらした眼でこっちを見た。

「――そこに持っているのはなんだ」

「ああ、ああびっくり致しました」

信乃は大きく喘いだ。必要以上に大きく喘いで、そうしてごくしぜんに微笑しながら、

「殿方のご存じないことでございます、あちらへいらしっていて下さいまし、こんな処へいきなりいらしったりして、……まだこんなに動悸がひどうございますわ」

こう云って、わざと襖は明けたまま、納戸の中へはいっていった。もう二足か三足、良人がこっちへ来れば、知也はみつけられるだろう、咳ひとつしてもおしまいだ。