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めおとちょう

めおと蝶

山本 周五郎

「講談倶楽部 春の臨時増刊号」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,977 字 · 47 页

青空文庫

八

そして自分でぷっとふきだし、おなかを押え、身を揉んで笑い転げた。

井巻済兵衛らの罪が定ったのは、その年の十二月の下旬であった。この疑獄は意外に大掛りになって、豪農からも数名の罪人が出、井巻済兵衛は切腹、重臣のうち二名は改易、三名は重謹慎、その他七名追放と、永謹慎、削禄、閉門など、全部で二十名が申渡しを受けた。……重臣の処罰は幕府の認可を取らなければいけない、大和守はそのため届けをして、規定の参覲よりひと月早く、正月の祝いを済ませるとすぐに、江戸へ立っていった。

八

三月五日に判決が公表された。

上村良平は追放で、二日後の三月七日、関屋口から追われるということである。その前日の夜、文代が隠居所へいってみると、信乃は男物と女物の旅衣装を出し、なにかこまごました物を包んでいるところだった。

「なにをしていらっしゃるの、お姉さま、お手伝い致しましょうか」

「ありがとう、もう終ったところよ」

「こんな旅装束なんかお出しになって、まるでどこかへいらっしゃるようね」

「だってそうなのですもの」信乃は包んだ物を脇へ置き、妹を見て微笑した、「――明日は暗いうちに出なければならないのでしょう、今夜こうしておかなければまにあいませんもの」