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おもいで
ロッパの悲食記
古川 緑波
古川緑波『ロッパの悲食記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:想い出、ああ東京は食い倒れ、浅草を食べる、色町洋食、うどんのお化け、甘話休題、牛鍋からすき焼へ、下司味礼賛、神戸、氷屋ぞめき、このたび大阪、清涼飲料、食べたり君よ、駄パンその他、八の字づくし、富士屋ホテル。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,651 字 · 114 页
戦前からやっていた、今朝の新橋の店は、やっている。ここのは、関西風ではなく、ワリシタで食わせるので、牛鍋気分である。
浅草の今半だの、松喜も又やり出した。そしてこれらは、皆関東流である。
牛肉の鍋で変った店があったのを、思い出した。新橋の、うつぼ。牛肉ぶつ切りという奴。これは、ネギマのマグロの如く、牛肉をブツ切りにしたのと、葱も五分に切ったのを、味噌煮で食うのである。これは、如何にも安っぽくて、ゲテな味だったが、こんな店も、今の東京に一軒ぐらいあった方がいいな。
牛肉の鍋では、まだ変ったのがあった。終戦後間もなくの頃、と言ったら、まだ食いものの乏しい頃のことである。京都へ興行に行った時、谷崎潤一郎先生に連れて行っていただいた十二段家の鍋だ。終戦直後のことで、まだ自動車も乏しく、南座からそこ迄、人力車で行ったことを思い出す。
十二段家と言っても、昔の、幕の内だの何か食わせる十二段家ではなく、今のは、祇園花見小路にあって、洋食屋だ。谷崎先生に、その十二段家の、独特の牛肉鍋を御馳走になった。牛肉の鍋と言っても、ここのは頗る変っている。火鍋子が出て、その中へ自分で、ナマを入れて茹でて(というのは、火鍋子の中の汁には味が附いていない)適当なところで引き揚げて、一種の味噌の如きもの(これに秘伝があるのだろう)を附け