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おもいで

ロッパの悲食記

古川 緑波

古川緑波『ロッパの悲食記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:想い出、ああ東京は食い倒れ、浅草を食べる、色町洋食、うどんのお化け、甘話休題、牛鍋からすき焼へ、下司味礼賛、神戸、氷屋ぞめき、このたび大阪、清涼飲料、食べたり君よ、駄パンその他、八の字づくし、富士屋ホテル。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,651 字 · 114 页

青空文庫

昭和二十五年の夏だった。

再開したと聞いて、僕は、ヴェルネへ駆けつけた。

「オッパさん!」と、ヴェルネさんが、歓迎して呉れて、昔の僕の写真の貼ってあるアルバムを出して来たりした。

テーブルクロースも昔のままの、赤と白の格子柄。メニュウを見ると、昔一円なりしランチが、二百五十円と五百円の二種。五百円のを取ると、オルドヴルから、ポタージュ。大きなビフテキ。冷コーヒーに、ケーキ。

ビフテキも上等だったが、それにも増して嬉しかったのは、フランスパンの登場だった。終戦後は、アメリカ風の、真ッ白いパンばっかり食わされていたのが、久しぶりで(数年ぶり)フランスパンが出たので、嬉しかった。

その時の神戸滞在中、七八度続けて通った。そして、グリル・チキン、スパゲティ、ピカタ、アントレコット等、行く度に色々食ったものであった。

それが、それから数年経って行ってみたら、キャバレーになっていた。

でも、僕は、その辺を通る度に、ちらっと、在りし日のヴェルネクラブの方を見るのである。

今日も、ちらりと、その方を見ながら、元町へ入る。此の町は、昔から、日本中で一番好きな散歩道なのだが、ここには別段食いものの思い出は無い。