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おもいで

ロッパの悲食記

古川 緑波

古川緑波『ロッパの悲食記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:想い出、ああ東京は食い倒れ、浅草を食べる、色町洋食、うどんのお化け、甘話休題、牛鍋からすき焼へ、下司味礼賛、神戸、氷屋ぞめき、このたび大阪、清涼飲料、食べたり君よ、駄パンその他、八の字づくし、富士屋ホテル。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,651 字 · 114 页

青空文庫

氷屋ぞめき

近頃では、アイスクリームなんてものは、年がら年中、どこででも売っている。そば屋にさえも、アイスクリームが、あるという。

私たちの子供のころは、アイスクリームなんてものは、むろん夏に限ったものだったし、そうやたらに売っているものではなかった。

中流以上の家庭には、いまの電気洗濯機がある程度に、アイスクリームをつくる機械があって、時に応じて、ガラガラとハンドルを廻して、つくったものである。

そのころのアイスクリームってもの、どういうものか、今のより、ずっと黄色かった。卵がうんと入っているように見せて、そんな色を着けたのかも知れない。

映画館の中売りが売って歩いたのは、正にその黄色で、牛乳も何も入っていない、名前も、アイスクリンだった。

アイスクリームよりも、もうちょっと安いのが、ミルクセーキ。

これはたいていの氷屋に、一種の運動機具のごとき機械があってこれも手廻しで、註文に応じて、つくった。

アイスクリームも、ミルクセーキも、その名は、そのまま今も残っているが、味は全く違ったものになった。昔のは、もっと原始的な味だったが、素朴でよかった。

硝子の玉をつないだ、氷屋ののれんも、今はあんまり見られなくなったが、昔は、氷屋ののれんから夏が来たものだった。