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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

奥さん一人で大変なんです」

「警察では、何か手がかりでもついたのかい」

紋三は一々出し抜かれた様で、いい気持はしなかった。

「駄目ですよ、何も分ってやしないのです」書生ははき出す様にいった。「例の片腕の小包のことを、明智さんから通知したのでしょう。で、それを調べに来たのですよ。あのやかましい百貨店の片腕事件が、うちのお嬢さんの事件と関係があることが分ったものだから、警察でもやっと本気に騒ぎ始めたのですよ。そんな訳で、お嬢さんのなくなったことは、主人には今まで内密にしていたのが、すっかり分ってしまって、一層病気がひどくなったのです。実際滅茶滅茶です。我々にしたって夜もろくろく寐られやしない」

書生はニキビ面をしかめて、大袈裟にこぼして見せた。

紋三はそれだけ聞いてしまうと山野家を辞して、夫人の跡を追い赤坂の明智の宿に向った。彼の頭には様々の事柄がモヤモヤと渦を巻いていた。疑問の人物が一日一日ふえて行く様にも見えた。第一が例の奇怪な一寸法師、暇を取った運転手の蕗屋、昨夜の不思議な眼鏡の男、今また小間使小松の失踪、それに彼の敬愛する百合枝夫人もまた、渦中の人に相違ないのだった。