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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

いってしまってからハッとして明智の顔色を読んだ。

「随分変な事件だからね」だが明智は別に怒る様子もなくて、やっぱりニコニコしていった。「それはそうと、君は昨夜は大いに活動したそうだね。僕の方の手がかりなんかより、一つそれを聞こうじゃないか。君も中々隅に置けないね」

紋三はいきなり赤くなってしまった。明智がどうして昨夜の出来事を知っているのか、不思議で仕様がなかった。彼のニコニコ顔がにわかに薄気味の悪いものに思われて来た。

「君は、今山野夫人から何か聞いたと思うかも知れないが、その心配はない。奥さんは決して君の変装を感づきはしなかった」明智は紋三の表情を巧に読んでいった。「奥さんはこのごろ何もいわなくなった。一寸した事でも隠そう隠そうとしている。僕に探偵を依頼したのを後悔している様子さえ見える。だから、今日来たのも、早く犯人が見つけたい為ではなくて、僕がどこまで真相を探っているか、ビクビクもので、それを聞き出しにやって来たのだ」

「じゃ、あなたは奥さんが今度の犯罪に何か関係があると思うのですか」

紋三は明智の底意が知りたかった。

「関係のあることは明白だ。