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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

小包は粗末な木箱で、厳重に釘づけになっていたが、書生が無理にあけたのであろう、蓋が半分に割れて、中から何か油紙に包んだものがはみ出していた。

細長い木箱は午後の第一回の郵便物の中に混っていた。差出人の記名はなかったけれど、いずれどこからかの到来物に相違ないと思って、書生の山木は何気なく蓋を開いた。(ここでは封書の外の小包だとか書籍類などは、書生が荷造りを解いて主人の所へ差出す習慣だった)だが、一目中の品物を見ると、山木は青くなってしまった。彼はそれをどう処分していいか分らなかった。病中の主人を驚かすのは憚られた。といって、黙って置く訳には行かぬ。ふと思いついたのは客間に素人探偵の明智が来ていることだった。彼は兎も角、それを夫人と明智のところへ持って行くことにした。

明智は書生の説明を聞きながら箱の中から油紙に包んだ品物を取出して、丁寧に包みを解いた。中からは渋紙色に変色した人間の片腕が出て来た。肱のところから見事に切断され、切口に黒い血がかたまっていた。たまらない臭気が鼻を打った。

「君、奥さんをあちらへお連れしてくれ給え。これをごらんにならん方がいい」