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なのかななよ

七日七夜

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1951(昭和26)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,818 字 · 36 页

青空文庫

まあこれも遊びとしては粋なものだと、諦らめをつけることはできた。

だがそのあとがいけなかった。

夜明け前についとろとろしたと思うと、やかましい声で起こされ、もう定刻であるから、居続けにするか勘定を払って帰るか、どっちかにきめて呉れと云われた。見ると廊下で部屋を教えた婆さんで、そのうしろに強そうな男が控えていた。

「もちろん帰るが、女はどうした」

昌平も少しはむっとして云った。

「おいらんは癪が起って寝てますよ」

婆さんはせせら笑うように答え、ではこれがお勘定ですと云って、べらぼうに長い書付をそこへ出した。ごたごたとなにか書き並べてあるが、とうてい読めた代物ではない。見たばかりで眼がちらくらしてくる、で、要するに合計であるが「百七両三分一朱」となっているのをみて、昌平はわれ知らず唸り、それから一種の公憤に駆られて云った。

「冗談じゃない、いくら見ず知らずの人間だからって、あんまり人を馬鹿にしては困る」

「おや妙なことを仰しゃいますね、このお勘定になにかうろんでもあるっていうんですか」

もしも昌平にして、この世界の事情を多少でも知っていたら、そんなむだな口はきかなかったであろうし、少なくともその辺で甲をぬいだに違いない。