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なのかななよ

七日七夜

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1951(昭和26)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,818 字 · 36 页

青空文庫

四

「さあ、なんといったか、その、か、……かせん……かせんとかいう」

「うちにはそんなおいらんはいませんよ、お部屋はどの辺だったんです」

「この辺だと思うんだが、廊下をこう来て、たぶんその」

「へんな客があったもんだ」

婆さんは口の中で、もちろん聞えるように呟やいた。おいらんの名も知らないなんて、などと云い、「もしや花山さんではないか」と聞き糺して、それならその部屋だと、怒ってでもいるように指さし、怒ってでもいるように去っていった。

四

それから朝までの事は書きたくない。

昌平は独りで、空腹と渇きと、酔のさめてくる寒さとに震えていた。くしゃみばかりは景気よく出るが、水を貰おうにも喰べ物を取ろうにも、てんで相手になって呉れる者がなかったのである。

それはまあいい。そういう忍耐は割とすれば馴れている。また花山さんのおいらんが「今夜は眠らずに愛し合う」とか、身の上話しをよろこんで聞くとか、「こむらがえりが起るかしれない」などとまで囁やきながら、こんなにも徹底的に、ぜんぜんすっぽかしをくわせたことも、そこは遊女であってみれば、一方的に怒る気はなかった。

「これがふられたというやつだろうが、われながら相当なふられだと思うが」